<平成24年9月6日  直方市立感田小学校 3年生/直方聾学校 小学部 3年生>

感田小学校の3年生は4クラスあり、直方市内の小学校でも最大規模を誇ります。
今回、移動手段として初めて、動態保存の「国鉄バス」を使用しました。
また、同校区内にあり、交流している直方聾学校の生徒さんも併せて参加頂きました。

小学校から汽車倶楽部までは、動態保存のいすゞキュービック「国鉄バス」で
移動してきました。

小学校の社会科学習は、徒歩圏内にある「直方東小学校」のみ実施した経緯
がありますが、動態保存のバスを移動手段として使う事で機動性がUP、これ
により直方市内の全小学校に等しく機会を与える事が出来ます。

この日は、対象となる生徒の数が多い(4クラス)ため、まさしく「ピストン輸送」
状態で学校と汽車倶楽部間を4往復しました。
普段は一般公開される事のない「9600形蒸気機関車59647号機」が、生徒
の目の前にで〜んと居座っています(笑)。
今にも動き出しそうなほどに行き届いた整備状態は、保存会メンバーによる
定期保守作業の賜物でもあります。
生徒たちは、眼前の巨大な黒い塊に、みな目を丸〜くしていました。

実は当日、雨が降るとの予報が出ており、空模様が心配されましたが、何とか
持ちこたえてくれました。
今回は、あくまでも「社会科の授業」ですので、しっかりと学んで貰います。

「ちゃんと書きましたか〜?」
「は〜い!!」
「はい、よろしい。それじゃ次っ!」

そんなやり取りが、見ていて微笑ましいシーンでした。
実際に機関車の運転室部分に乗ってもらい、直に触れて体感して貰います。
運転席の周りは、メーターやらレバー類のオンパレード!
「これ、何をする装置ですか?」
「どうやって動かすの?」
「こうかな?」
また、実際に機関士(運転士)席に座ると、とにかく前が見えない事にビックリ。
「右なんか全然見えないでしょ、だから右側には『助士』さんが座るんだよ」

蒸気機関車を動かす事の大変さが、少しは伝わってくれたでしょうか。

一つの事をなしえる為に、色々な人々の力を合わせていく事(=人と人との
繋がり、関わり)の大切さを感じて貰えたら、と思います。
本物の石炭に触れてもらった上で「お土産」(笑)として持ち帰って貰います。
かつて「黒いダイヤ」と呼ばれ、筑豊地区が隆盛を極めた原動力となりました。

炭鉱の閉山とともに、かつての繁栄は見られなくなりましたが、日本の経済
産業を支えてきた事は間違いありません。
そんな「ふるさと」を再認識して貰いたいという思いです。
実際に石炭を燃やしている所です。
独特の匂いに鼻をつまんだり、煙が目に入ってしかめっ面になったり。

ほんのちょっと燃やしただけでこの騒ぎ。
なぜ蒸気機関車が消えていったのか、何となく理解できた・・・かな?

自宅に戻り、蒸気機関車の時代を知っている家族の方との会話がさぞ
盛りあがったのではないでしょうか?
続いて、2階にある鉄道模型館へ。
模型館のほぼ中央に鎮座する巨大なジオラマにビックリ!
「それでは、みんなで一緒に『出発進行!』」
蒸気機関車の模型が動き始めます。

普段は鉄道模型ショップにより「貸しコース」として運営されています。
目の前を通過する、リアルに作り込まれた鉄道模型車両の動きにみんな
釘付け!
本物そっくりな蒸気機関車のロッド類の動きをじっくり観察して貰います。

この日は、蒸気機関車⇒ディーゼル車⇒電車、と変遷していった、筑豊地区
の鉄道事情を、模型を使って説明しました。

ディーゼル機関車が引っ張る赤い客車(レッドトレイン)は、引率の先生方の
方から「懐かしいなあ」というコメントが。
しかし、当の生徒さんたちはやっぱり、今の「銀色電車」817系がお気に入り
のようでした。
昨年、惜しまれつつ取り壊しとなった旧・直方駅舎も、模型の世界で表現され
ています。
「昔はね、ここが入口専用でこっちが出口専用だったんだよ」
「ええ〜っ!」
「それだけ、直方という街は人の流れも凄かった、という事」

かつて、筑豊各地の炭鉱で産出される石炭は鉄道に乗ってここへ集められ、
そして若松などの積み出し港へと運ばれていきました。
その為、鉄道にとっては重要な「ターミナル」となり、一時は日本最大の機関区
にもなり、最大で70両近い機関車が所属していたそうです。

今では機関区も無くなりましたが、まだ電車の基地として存在しています。
直方は今でも鉄道にとって重要な場所である事に変わりはないのです。
扇子を持って何をしているのか?
別に暑いから仰いでいる訳ではありません。
かつて直方にあった「扇形機関庫」の説明をするのに使っています。

「この機関車の車庫、何の形に似てますか〜?」
「・・・」(答えが出ず)
「ハイ、これを見て下さい(といって扇を広げて見せる)」
「あ、扇子だ!」
「そうです、扇子。つまり『おうぎ』ですね」
「だから『おうぎがたきかんこ』と言います」

こんな風にやりとりして。

今回、初めて「4クラス」という大きな規模で実施させて頂きましたが、不慣れな面もあり、かなり
切羽詰まった感じで、まるで嵐のような1日となりました。
それでも、生徒さんたちは興味津々で、色々な事を貪欲に吸収していこうという姿勢が見られました。
そんな姿を見て、こちら側も新鮮な刺激を受けました。
これから、この子たちがどう成長していくのか、楽しみでもあります。

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